大阪高等裁判所 昭和43年(ラ)301号 決定 1969年3月14日
抗告人 兵庫トヨタ自動車株式会社
右代表者代表取締役 滝川勝二
右代理人弁護士 元原利文
主文
原決定を取消す。
本件を神戸地方裁判所姫路支部に差戻す。
理由
本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりであり、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
仮処分においても、その被保全権利が終局的に金銭債権(例えば執行不能の場合の填補賠償)ないし特定の金銭(本件のごとき換価代金)に転化しても、仮処分債権者がその保全目的を達しうる場合であって、かつ、仮処分の執行後その本案確定判決の執行に至るまでの間において仮処分物件に著しい価額の減少を生じるおそれのある場合においては、仮処分債権者としては、保全目的を達するために、むしろ仮処分物件の価額の減少を来さない間にこれを換価してその換価代金を執行機関に保管させておく必要の存することは、仮差押の場合となんら差異がない。このような場合には、仮処分についても、民訴法七五〇条四項後段の準用があるものと解すべきである。本件においては、所有権留保のもとに月賦販売された自動車につき、その代金債務の不履行を理由として、所有権にもとづく引渡請求権の保全のために当該自動車を執行官の保管とした場合であって、しかも、自動車というものは通常の方法で保管される場合であっても型の旧式化等の事由により月日の経つにつれて著しい価格の低下をみることは、当裁判所に顕著な事実に属する。ことに、本件自動車は昭和四二年九月二二日に新車として販売されたということであるから、本件仮処分の執行された昭和四三年八月二日当時においては、すでに一〇ヶ月余使用された中古車であり、仮処分債権者である抗告人の有していた残代金債権四七万四、〇二〇円の回収目的との関連を顧慮するときは、原裁判所としても、本件につき換価の必要性の存否を審査するべきである。
よって、民訴法四一四条、三八九条一項に則り主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 木下忠良 裁判官 村瀬泰三 田坂友男)
<以下省略>